
「定年退職金って、どれくらい税金が引かれるんだろう?」 「65歳から受給する年金にも税金がかかるって本当?」 「退職後の手取りを少しでも多く残すための節税方法を知りたい」
長年勤め上げた会社を退職するとき、まとまったお金として受け取る「退職金」。そして老後の生活を支えるメインの収入となる「公的年金」。
実は、これらのお金にもしっかりと税金(所得税・住民税)がかかります。しかし、現役時代の給与とは異なる「定年後特有の強力な税金控除ルール」が用意されていることをご存知でしょうか?
この仕組みを知っているか知らないかで、手元に残る金額が数百万円単位で変わることもあります。本記事では、退職金と年金にかかる税金の基礎知識から、手取りを最大化するための賢い受け取り方まで分かりやすく解説します!
定年後の税金はここが変わる!知っておくべき2つの特別控除
現役世代のときは、お給料から「給与所得控除」が差し引かれた上で税金が計算されていました。 これが定年退職前後になると、収入の種類が変わり、適用される節税ルール(控除)も以下の2つへとシフトします。
■退職所得控除:退職金を受け取るときに使える、非常に大きな非課税枠 ■公的年金等控除:60代・70代以降に受給する年金にかかる税金を抑える控除枠
退職金も年金も、振り込まれた金額全体にそのまま課税されるわけではありません。国が「老後の貴重な生活資金」として配慮し、通常よりもかなり税金が安くなる優遇措置を設けてくれているのです。
退職金の手取りを最大化する「退職所得控除」の仕組み

退職金にかかる税金は「退職所得」として扱われ、他の所得(給与や不動産収入など)とは分けて計算する「分離課税」が適用されます。
① 勤続年数で決まる!退職所得控除額の計算方法
退職所得控除の最大のポイントは、「勤続年数が長いほど控除額(非課税になる枠)が大きくなる」という点です。
具体的には、以下の計算式で控除額を算出します。
| 勤続年数 | 退職所得控除額の計算式 |
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年) |
※勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げます(例:22年3ヶ月 ➔ 23年として計算)。
💡 具体例:勤続30年の場合
- 800万円 + 70万円 × (30年 - 20年) = 1,500万円
つまり、勤続30年の方であれば、退職金1,500万円までは税金が1円もかかりません!
さらに、控除枠を超えた分についても「2分の1」した金額だけに課税されるため、一般的なお給料と比べて税負担は非常に軽く抑えられます。
② 退職金は「一括(一時金)」と「分割(年金)」どっちが得?
企業によっては、退職金を「一括(一時金)」で受け取るか、「分割(年金形式)」で受け取るかを選べる場合があります。
■一括(一時金)で受け取る場合: 前述の「退職所得控除」がフル活用できるため、税制面では圧倒的にお得になります。
■分割(年金形式)で受け取る場合: 退職所得控除は使えず、「公的年金等控除」の対象(雑所得)になります。公的年金と合算されるため、後述する国民健康保険料や介護保険料が跳ね上がるリスクがあります。
基本的には、「一時金受取で退職所得控除をしっかり使い切る」のが手取りを増やす王道ルールです。
③ 「退職所得申告書」を提出しないと20.42%も引かれる!?
退職時に勤務先から渡される「退職所得の受給に関する申告書」という書類は、必ず記入して提出しましょう。
これを提出しておけば、会社側が控除を適用した正しい税額を計算し、源泉徴収してくれます。もし提出し忘れると、退職金の額面に対して一律20.42%の税金が引かれてしまい、後から確定申告をしないと取られた税金が戻ってこないため注意が必要です。
年金にも税金がかかる!「公的年金等控除」と「雑所得」の基本

「年金は老後の仕送りみたいなものだから非課税では?」と思われがちですが、一定額を超えると「雑所得」として所得税・住民税の課税対象になります。
① 公的年金はいくらから税金がかかる?
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)には「公的年金等控除」という非課税枠があります。年金収入が以下の金額以下であれば、税金はかかりません。
■65歳未満:年金収入が 108万円以下(控除額60万円+基礎控除等) ■65歳以上:年金収入が 158万円以下(控除額110万円+基礎控除48万円)
※遺族年金や障害年金は「非課税」のため、いくら受給していても税金はかかりません。
② 65歳以上で使える「公的年金等控除」の早見表
年金受給者の多くが該当する「65歳以上(他の合計所得が1,000万円以下)」の場合の控除額は以下の通りです。
| 年金等の収入金額 | 公的年金等控除額 | 雑所得の計算式 |
| 110万円未満 | 全額 | 0円 |
| 110万円以上〜330万円未満 | 110万円 | 年金収入 - 110万円 |
| 330万円以上〜410万円未満 | 25% + 27.5万円 | 年金収入 × 75% - 27.5万円 |
例えば、65歳以上で「公的年金収入が年間200万円」の方の場合、110万円が控除されるため、雑所得の金額は90万円(200万円 - 110万円)となります。ここからさらに基礎控除などを差し引いた残りに課税される仕組みです。
③ 企業年金やiDeCoを併せて受け取る際の注意点
企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)を「年金形式(分割)」で受け取る場合も、公的年金と同じ「公的年金等控除」の枠に合算されます。
公的年金の受給額が多い人がiDeCoも年金形式で受け取ると、110万円の控除枠をオーバーして雑所得が増え、所得税や健康保険料の負担が増えてしまう可能性があります。iDeCoなどは「一時金受取(退職所得控除の利用)」も視野に入れて受取方法をシミュレーションすることが重要です。
定年退職後に「確定申告」が必要なケース・不要なケース
高齢者の負担を減らすため、年金受給者には「確定申告不要制度」が用意されています。しかし、全員が不要になるわけではありません。
💡 確定申告が「不要」な人
以下の両方の条件を満たす場合は、確定申告をする必要がありません。 ■公的年金等の収入金額の合計が「400万円以下」 ■公的年金以外の所得(アルバイト代、不動産収入、私的年金など)が「20万円以下」
⚠️ 確定申告が「必要(またはした方が得)」な人
■年金収入が400万円を超える人 ■年金をもらいながらアルバイトや副業をし、その所得が20万円を超える人 ■医療費が多くかかった人(医療費控除を受けたい人) ➔ 【申告すると税金が戻る!】 ■住宅ローンを組んで住み替えた人(住宅ローン控除を受けたい人) ➔ 【申告すると税金が戻る!】 ■退職時に「退職所得申告書」を出し忘れた人 ➔ 【申告すると税金が戻る!】
年金受給者であっても、医療費控除や生命保険料控除などの還付申告を行えば、源泉徴収された税金が手元に戻ってくるケースが多々あります。
まとめ:正しい知識でセカンドライフの手取りをしっかり守ろう
定年退職前後の税金対策で知っておくべきポイントをまとめます。
■退職金は「退職所得控除」をフル活用できる一括受取(一時金)が基本お得! ■「退職所得申告書」の提出を忘れずに! ■65歳以降の公的年金は「158万円」を超えると課税対象を意識する。 ■医療費控除などをうまく活用して、還付申告で税金を取り戻す!
定年後のマネープランでは、「いかに収入を増やすか」と同じくらい「税金や社会保険料などの支出をいかに抑えるか」が手取り額を左右します。
退職を迎える前や年金受給が始まる前に、一度ご自身の勤続年数や想定される年金額を整理し、賢い受け取り方を準備しておきましょう!

