【F17】[保険]① 医療や介護に備える、本当に必要な保険の選び方 

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はじめに

50代を迎えると、体調の変化を感じる機会が増え、「そろそろ医療保険や介護保険を見直すべき?」「定年を迎える前に、今の保険料のままで大丈夫か確かめたい」と考える方が一気に多くなります。

しかし、「不安だから」と勧められるがままに手厚い保険に入り直したり、古い保険をそのまま継続したりするのは禁物です。なぜなら、50代以降の保険選びこそ、人生の後半戦の「貯蓄(資産)」を守る最大のカギになるからです。

第3章では、50代・シニア世代が知っておくべき「本当に必要な医療・介護保険の選び方」を、公的保障を踏まえて分かりやすく解説します。

医療・介護の不安に「民間保険」は本当に必要?

50代以降を襲う「とりあえず継続・加入」の罠

50代以降になると、周囲で病気や介護の話が増え、不安から保険を解約できなくなったり、さらに手厚い特約を追加したりしがちです。しかし、年齢が上がるほど民間保険の保険料は跳ね上がります。

ここで知っておきたいのは、日本が世界に誇る手厚い公的保障制度(健康保険・介護保険)の存在です。現役時代と同じく、あるいはそれ以上に、シニア世代の医療・介護コストは国や自治体が大部分をカバーしてくれます。この土台を知らずに高い保険料を払い続けると、老後の貴重な生活資金を削ることになってしまいます。

保険の基本原則:貯蓄があるなら保険は不要?

FPが考える保険の鉄則は、「発生する確率は低いが、もし起きたら破産するレベルの大損害」に備えるものです。

50代以降の医療や介護は、若い頃に比べて「発生する確率」が高くなります。しかし、「かかった費用が原因で破産するかどうか」は別問題です。もしこれまで実直に蓄えてきた貯蓄があるなら、高い保険料を支払って民間保険に頼る必要性は大幅に下がります。保険は「不安を解消するお守り」ではなく、あくまで「貯蓄が足りない分を補う道具」と考えましょう。

医療保険を考える前に知っておくべき「公的医療保険」

もし大病をして長期間入院したら、何百万円もかかるのでは……」という不安は、日本の公的制度が解消してくれます。

年齢とともに負担が下がる「高額療養費制度」

どれだけ医療費がかさんでも、1ヶ月(1日から末日まで)の自己負担額を一定の基準に抑えてくれるのが「高額療養費制度」です。

【現役世代(50代)の目安】 年収約370万〜770万円の場合、どんな手術や入院をしても、1ヶ月の自己負担額は約8万円+αで収まります。

さらに、定年を迎えて70歳以上になると、現役並みの所得がある場合を除き、自己負担の上限額はさらに低く(一般的な所得で月額5万7,600円など)設定されます。つまり、年齢が上がるほど公的保障による守りは固くなるのです。

定年退職後の「傷病手当金」はどうなる?

50代現役会社員の方であれば、病気で休職しても最長1年6ヶ月にわたり、給料の約3分の2がもらえる「傷病手当金」があります。

ただし注意が必要なのは、定年退職後(再雇用終了後など)や、年金受給期に入ったあとです。退職して国民健康保険に切り替わると、原則として傷病手当金はなくなります。また、年金を受給しながら働く方の場合は、傷病手当金と年金の調整が行われます。

医療保険が本当に必要な50代以降の人は?

公的保障を踏まえると、50代以降で民間医療保険の優先度が高いのは以下のような方です。

これから教育費のラストスパートや住宅ローン完済を控えており、手元の現金(貯蓄)を減らしたくない人                                              ◆自営業・フリーランスで、働けなくなったときの収入保障が一切ない人               ◆退職金や老後資金の貯蓄が、想定より少なめで不安な人

すでに「医療費の予備として100万〜200万円はいつでも動かせる」という貯蓄があるなら、高い民間医療保険は卒業を検討しても良いタイミングです。

医療保険を選ぶときの3つのチェックポイント

50代以降で医療保険を見直す、または継続する場合は、現代の医療実態に合わせる必要があります。

「入院日額」より「一時金」を重視する

昔加入した保険の多くは「入院1日につき1万円、120日目まで保障」といった日額・長期入院向けのタイプです。しかし、現代の医療は「短期入院・通院治療」へ劇的にシフトしています。

50代以降に多い三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)であっても、現在は数日から2週間程度で退院し、あとは通院で抗がん剤治療などを続けるケースが大半です。 そのため、これからの見直しでは「入院したら一律10万円、まとまったお金がすぐに出る入院一時金タイプ」や、通院治療に手厚い保険を選ぶのが正解です。

定年後の家計を圧迫する「特約盛り盛り」を避ける

「がん特約」「先進医療特約」「女性特約」など、あれもこれもと特約をつけると保険料はシニア世代特有の高さになります。
特に「先進医療」は魅力的につづられますが、実際に受ける確率は極めて低いです。不安な気持ちを逆手にとった特約の追加はやめ、保障をシンプルに絞りましょう。

保険期間の罠:「定期」から「終身」への切り替えタイミング

50代で最も注意したいのが「定期型(10年更新など)」の医療保険です。 60歳、70歳と更新を迎えるたびに、保険料が2倍、3倍と跳ね上がります。年金暮らしが始まったタイミングで保険料が急騰し、維持できずに解約せざるを得なくなるケースが後を絶ちません。

もし老後も医療保険を残したいのであれば、50代のうちに「保険料が一生上がらない終身型」へ切り替えるか、いっそ保険をなくして貯蓄で備えるかの二択を決断すべきです。

比較項目定期保険(かけ捨て型)終身保険(一生涯保障型)
保険期間10年や65歳までなど「決まった期間」だけ解約しない限り「一生涯」つづく
保険料の特徴加入時は安いが、更新するたびに高くなる加入時の保険料が一生上がらない
50代以降・老後への
具体的な影響(最重要!)
⚠️ 60代・70代の更新で保険料がハネ上がる!
⚠️ 年金暮らしの時期に維持できなくなるリスク大。
◯ 何歳で病気になっても保険料は変わらない。
◯ 現役時代(60歳や65歳)までに払いきる設定も可能。
メリット・今の保険料を安く抑えられる
・必要な時期だけピンポイントで保障を足せる
・老後も確実に保障がのこる
・解約したときにお金(解約返戻金)が戻るタイプもある
デメリット・何事もなく満了するとお金は戻らない(かけ捨て)
・高齢になると更新できなくなる
・定期保険にくらべて、毎月の保険料が高め
・一度加入すると簡単に見直し(解約)しにくい
向いている人「定年までの10年間だけ念のため」など、期間を区切って安く備えたい人「老後の病気リスクに一生涯備えたい」など、確実な安心をずっと持っていたい人

介護リスクに備える:公的介護保険と民間介護保険

50代にとって、親の介護だけでなく「自分自身の老後の介護」もリアルな問題になってきます。

公的介護保険の基本

日本の公的介護保険は、40歳から全員が加入し、保険料の支払いがスタートしています。 65歳以上になり、市区町村から「要支援」や「要介護」の認定を受けると、デイサービス、訪問介護、福祉用具のレンタルなどの介護サービスを、原則「1割(所得に応じて2〜3割)の自己負担」だけで利用できます。

つまり、介護が始まったからといって、いきなり毎月数十万円の介護費用が自己負担になるわけではありません。

民間介護保険が必要なケースとは?

では、民間の介護保険は必要でしょうか?結論から言うと、多くの方にとって優先度は低いです。なぜなら、民間介護保険はお金が支払われるハードル(支払い事由)が公的制度より厳しく設定されていることが多いからです。

もし民間介護保険の検討が必要なのは、以下のような「こだわり」がある場合のみです。

「特別養護老人ホーム(特養)」ではなく、手厚くて個室の「民間の有料老人ホーム」に絶対に入りたい: 入居一時金(数百万円〜数千万円)の足しにするため。

子供に絶対に介護の手間(在宅介護)をかけたくない: 潤沢な外部サービス費用を保険金で賄いたい場合。

これらに該当せず、「地域の公的サービスや一般的な施設で十分」と考えるのであれば、毎月高い介護保険料を払うよりも、現金をそのまま介護資金として銀行にプールしておく方が、使い道が制限されず圧倒的に自由です。

まとめ

あなたにとって「本当に必要な保険」のセルフチェック

50代以降の保険選びで一番大切なのは、「保険会社に老後の資金を預けすぎないこと」です。以下の3ステップで、ご自身のセルフチェックをしてみてください。

  1. 現在の「純貯蓄(老後資金)」を把握する: 医療費や介護の初期費用として動かせる現金がいくらあるか?
  2. 加入中の保険の「10年後・20年後の保険料」を確認する: 年金生活になっても無理なく払い続けられる金額か?
  3. 無駄な保険を解約し、浮いたお金を「手元の現金」として守る: または新NISAなどの安全な資産運用で少しずつ増やす。

民間保険に毎月2万円払うなら、それをそのまま貯蓄に回せば、年間24万円、10年で240万円の「何にでも使える自由な現金」になります。現金は、病気にも、介護にも、楽しい老後のレジャーにも使える最強の味方です。

定年という大きな節目を迎える前の今こそ、保険証券を机に広げ、現役時代の「入りっぱなし保険」をスマートに整理していきましょう!

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