「老後に向けて自宅を売却し、コンパクトな家に住み替えたい」 「親から引き継いだ実家を処分したいけれど、税金や手続が不安……」
前回の【F45】では、50代から考える老後の住まい方(リフォーム vs 住み替え)について解説しました。しかし、実際に「今の家を売る」「実家を処分する」というステップに進もうとすると、多くの方が税金や売却手数料などのコストで足踏みしてしまいます。
不動産売却の世界では、知識があるかないかだけで手取り額が数百万円単位で変わることが珍しくありません。
今回は、50代・シニア層が自宅や実家を売却・処分する際に必ず知っておくべき「お金と節税の基本」をFPの視点からわかりやすく解説します!
家を売るといくらかかる?不動産売却にかかる「お金とコスト」のリアル

家を売却した代金が、そのまま全額手元に残るわけではありません。まずは売却時に引かれる費用や税金の現実を把握しておきましょう。
売却時にかかる主な経費
不動産を売却する際には、以下のような諸費用がかかります。一般的に売却価格の約4%〜6%が目安となります。
■仲介手数料:不動産会社に支払う報酬(売却価格×3%+6万円+消費税が上限) ■印紙税:売買契約書に貼り付ける印紙代 ■抵当権抹消登記費用:住宅ローンが残っている場合に必要な登記費用 ■一括返済手数料:住宅ローンを途中で全額返す際に銀行へ払う手数料 ■測量費・解体費:土地の境界を確定させる場合や、家屋を取り壊して更地にする場合に必要な費用
譲渡所得税(売却益にかかる税金)の仕組み
不動産を売って「利益(譲渡所得)」が出た場合、その利益に対して所得税と住民税が課税されます。
■譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用) 取得費:その家を買ったときの価格から減価償却費を引いた額 譲渡費用:仲介手数料や解体費など、売るためにかかった直接の費用
なお、課税される税率は不動産の所有期間によって大きく変わります。
| 所有期間 | 税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
| 5年以下(短期譲渡所得) | 39.63% |
| 5年超(長期譲渡所得) | 20.315% |
5年を超えて所有していれば税率は約20%まで下がります。50代で自宅や実家を売る場合は「5年超」に該当することがほとんどですが、利益が出た場合は約2割が税金として引かれる点に注意が必要です。
知らないと大損!50代が絶対使うべき「3つの節税特例」

「利益の2割も税金で取られるのは厳しい……」と感じた方もご安心ください。居住用のマイホームや相続した実家を売る場合には、国から強力な税制上の優遇措置(特別控除)が用意されています。
特例①:3,000万円特別控除(マイホームを売ったときの特例)
自分が住んでいる自宅(マイホーム)を売却した場合、所有期間に関わらず譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる最強の制度です。
■効果:売却益が3,000万円以内であれば、譲渡所得税は0円になります。 ■注意点:この特例を使うと、売却後新しく家を買う際の「住宅ローン控除」が一定期間使えなくなる場合があります。買い替えを行う方はどちらを優先すべきか事前試算が必須です。
特例②:被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除
いわゆる「空き家特例」と呼ばれる制度で、親の実家を相続して売却する際に活用できます。要件を満たせば、こちらも最大3,000万円が控除されます。
■主な適用条件: 1.昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された戸建て(旧耐震基準)であること 2.亡くなった親が一人で暮らしていた実家であること 3.相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること 4.売却代金が1億円以下であること
■ポイント:買主側で売却後に解体や耐震改修を行う場合でも適用可能となるなど、制度の使い勝手が向上しています。(※相続人が3人以上の場合は1人あたり上限2,000万円に縮小されます)
特例③:マイホーム買換え時の損益通算・繰越控除
「家を売ったら買ったときより安くなってしまい、損が出た(譲渡損失)」という場合に使える制度です。
■効果:売却で出た赤字(損失)を、その年の給与所得など他の所得と相殺(損益通算)できます。相殺しきれなかった分は、翌年以降最大3年間にわたって繰り越して節税できます。 ■結果:売却した年の所得税や住民税が大幅に還付・減額される可能性があります。
後悔しない!自宅・実家を高く・スムーズに売る「4ステップ」

節税の仕組みを理解したら、実際の売却手続きをスムーズに進めるための手順を押さえましょう。
【STEP 1】複数社への一括査定・相場把握
↓
【STEP 2】条件に合った媒介契約の締結
↓
【STEP 3】荷物の処分(片付け・内覧準備)
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【STEP 4】売却・引き渡しと「確定申告」
ステップ1:一括査定で「複数のプロの目」を入れる
1社の不動産会社だけに査定を頼むのは危険です。必ず3社以上の不動産会社に査定を依頼し、適正な売却相場を見極めましょう。提示された価格の根拠をしっかり説明できる会社を選ぶのがコツです。
ステップ2:売却理由に合わせた「媒介契約」を選ぶ
不動産会社と結ぶ契約には主に以下の2種類があります。
■専任媒介契約:1社に絞って依頼。報告義務があり、手厚く売却活動を行ってもらえる。 ■一般媒介契約:複数の会社に同時に依頼可能。人気エリアで需要が高い物件に向いている。 早めに確実に売りたい場合は「専任媒介」、好立地で少しでも高く競わせたい場合は「一般媒介」など、戦略に合わせて使い分けましょう。
ステップ3:不用品の処分(片付け)を進める
購入希望者が内覧(見学)に来た際の第一印象は、売却価格やスピードに大きく影響します。また、将来の引越しや住み替えを楽にするためにも、50代の体力があるうちに不要な家具や荷物の片付け(プレ遺品整理)を開始しておきましょう。
ステップ4:確定申告を忘れずに行う
次回【F47】の予告
自宅や実金を高く・賢く売るノウハウを押さえたら、次に考えるべきは「売った後、どこに移り住むか?」です。
次回の【F47】では、定年後の住み替え先として人気の高い「コンパクトマンション」「賃貸住宅」「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」のメリット・デメリットと、シニア期の失敗しない住まい選びの基準を徹底解説します!
過去の[不動産]シリーズはこちら
👉 【F18】[不動産]①:持ち家 vs 賃貸!ライフプランから考える賢い選択 👉 【F24】[不動産]②:50代から考える我が家の寿命と資産化ステップ 👉 【F30】[不動産]③:家を買う・買い替えるベストなタイミング 👉 【F45】[不動産]④:【老後の住まい】リフォーム?住み替え?50代から始める「家の終活」完全ガイド
まとめ:50代の不動産整理は「税金の知識」が成功の鍵
不動産の売却や処分は人生で何度も経験するものではありません。しかし、正しい税金の知識を持ち、使える特例をしっかり活用することで、数十万〜数百万円単位の資産を守ることができます。
「住み慣れた家だから」「手続きが面倒だから」と先延ばしにせず、まずは我が家の査定額を知り、使える節税制度をチェックすることから始めてみましょう。
💡 FPからのワンポイントアドバイス 「我が家の場合は3,000万円控除が使える?」「売却したお金で老後資金はいくら残る?」など、個別のお悩みやキャッシュフロー表の作成については、ぜひ無料FP相談をご活用ください。専門家と一緒に納得のいく不動産計画を立てていきましょう!

